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痛い痛風のお話

 足の親指のつけ根が腫れることで知られる痛風は、よく風が吹いても痛いといわれるほど激烈ですが、この痛風の発病には尿酸(高尿酸血症)が密接な関係をもっています。
 もっと正確にいうと、尿酸塩が関節各部に蓄積することによって反復して起こる急性の関節炎で、「エネルギー代謝の調節障害を基盤とした高尿酸血症をもった人が、過剰に産生された尿酸のために急性の関節炎症状を起こす病気」と定義されています。
 最初の痛風発作は、70%近くの人が足の親指のつけ根の痛みを訴えます。その理由はまだ明らかではありませんが、この痛みは1~3日でピークを過ぎ、2週間以内には治まります。しかし、1~2年後に2回めの発作が起こり、その後はしだいに発作の間隔が短くなっていきます。また、発作部位も、くるぶしの関節、かかとやアキレス腱の周辺、膝関節、手の関節、その他にも生じます。 痛風は中年男性に多い病気ですが、最近では20~30歳代で発症する患者さんの増加がみられます。痛風の90%以上は原因不明ですが、遺伝、ストレス、食事、過激な運動、アルコールなどが誘因となって発症することがわかっています。
 ただし、遺伝の関係する痛風は全体の1割程度であり、この病気は環境因子のほうが大きいと考えられています。また、無治療のままの高尿酸血症者が痛風(関節炎症状)を発症するまでには、ふつう10年程度かかるとされています。しかし、すべての高尿酸血症者が痛風になるわけではありません。

 最も大切なことは高尿酸血症を治すこと 
 痛風の痛みは強烈ですが、これだけで生命に危険がおよぶことはありません。また、発作の自覚症状は薬剤で阻止可能です。しかし、基盤にある高尿酸血症を放置した場合は、糖尿病、高血圧、虚血性心疾患、腎障害などの怖い合併症が出ます。したがって、痛風は体内に尿酸が異常蓄積した状態にある “警報” でもあるのです。そこで、痛風発作の有無にかかわらず、集団検診などで高尿酸血症と指摘された人は、一度専門医に診察をあおぎ、生活改善などによって尿酸値を下げる工夫がなによりも必要です。
 ちなみに、健常者では1日に700mgの尿酸がつくられ、体内にも常時1200mgほどプールされています。血中での尿酸値の正常範囲は6~5mg/dl以下ですが、症状の有無にかかわらず治療を開始する必要があるのは8.5mg/dlを超えた場合です。
 かつて高尿酸血症は、尿酸が体内で過剰に合成されるために生じる場合だけでなく、腎臓の排泄機能の低下によっても生じると考えられていました。また、食事に含まれているプリン体の過剰摂取が高尿酸血症を招くとされていましたが、最近ではこの機序はもっと複雑であり、体内で合成されるプリンヌクレオチドの合成調節機構の破綻によって生じるものと、説明されています。

 痛風の治療法と、守るべきポイント 
 痛風発作に対しては、コルヒチンや非ステロイド系抗炎症薬が用いられます。コルヒチンは早期に服用すれば効果は大きく、「チクチク痛む」あるいは「なんとなく腫れぼったい感じがする」などの予感のあるとき、一錠の服用で痛みは防げます。
 発作が起こった場合は、非ステロイド系抗炎症薬を服用します。発作が治まったあとは、血液中の尿酸の量を下げるお薬を服用します。
 先にも述べたように、痛風の本態はあくまで高尿酸血症にあるため、薬物療法で発作が寛解したあとは、高尿酸血症に対する治療を開始します。痛風の最大の治療目的は高尿酸血症のコントロールにあります。いわば原因療法なのですが、高尿酸血症の治療は痛風のためだけの治療でないことを、よく理解してください。というのは、この治療中には痛風発作がおこることもあるからです。
 目標は血清尿酸値を6.0mg/dl以下で一定の幅に保つことにあります。尿酸のコントロールのための薬剤はさまざまですが、どの薬剤を選択するかは、個々の患者さんの病態に応じて決められます。
 治療法のなかには食事療法も含まれますが、すぐれた治療薬の登場した今では、食事療法の中身も以前とは、かなり異なってきています。かつてはプリン体制限食が中心でしたが、このような食事療法は①栄養の偏りを生じやすい、②患者さんの精神的苦痛が大きい、③食品中のプリン体の大部分は腸管内で分解される、などの理由から現在ではほとんど行なわれなくなりました。
 そこで、食事療法は痛風の合併症の予防や治療の観点から行なわれますが、ポイントは次のとおりです。

・ 1日の摂取エネルギー量を守る。
・ 栄養バランスのよい食事を心がける。
・ 水分を十分とる。
・ 塩分を取りすぎないようにする。
・ アルコール飲料は控えめに。

 高尿酸血症の治療がきちんと続けられていれば、痛風発作も “自然消滅” します。しかし、残念なことに、発作が起きなくなった安心感などから薬の服用を中断する忠者さんがしばしばいます。これでは、また以前の状態に戻るばかりか、怖い合併症の進行もストップできなくなります。最後に、痛風治療は生涯治療であることも、ぜひ理解しておいていただきたいと思います。

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