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2020-09-09

水虫のお話

 はじめに 
水虫は夏の皮膚病といわれ、夏の間は皮膚科外来患者のうち10~20%が水虫患者だそうです。しかし最近では暖房が普及したためか、冬でも症状があることもめずらしくありません。 日本での患者数は推計で1500万人ともいわれ、サラリーマンの4~5人に1人、また女性でも5~6人に1人は水虫といわれています。水虫はいまや国民病といわれるほどの蔓延ぶりですが、明治以前の医書にはこれに相当する病気はなく、靴の普及とともに広まったと言われています。

 水虫とは 
水虫は皮膚糸状菌という真菌(カビの一種)が原因で起こる皮膚病で、正式病名を汗疱状白癬といいます。皮膚糸状菌の中でもとくに白癬菌属の菌が90%以上を占めるため、原因は白癬菌であるといってもさしつかえありません。水虫だけでなく、からだにできるゼニタムシ(斑状小水疱性白癬)やタムシ(頑癬)、股にできるインキンタムシ(頑癬)、子どもの頭にできるシラクモ(頭部浅在性白癬)も同じ白癬菌が病原菌ですが、水虫とは発症部位が異なるので病名も違ってくるわけです。 つまり白癬菌が病原菌であり、そのうち足の裏(足蹠)、手のひら(手掌)、足の指の間(趾間)、爪の中にできるものが水虫と呼ばれています。なかでも足白癬が非常に多く、手白癬は少ないので、たんに水虫といえば、通常足白癬をさします。水虫は人から人へうつる病気ですが、片側性といって、当初から両方の手足に発症することはなく、片方の手または足にでき、それがもう一方へうつって、両側性となります。子どもの水虫もまれにみられ、これは親からうつったケースが大部分です。

 水虫はどうしてできるのか 
水虫の原因になる白癬菌は、人間の皮膚のいちばん外側の角質層に含まれるケラチンというタンパク質を栄養源としています。その角質層のもっとも厚いところが足の裏で、白癬菌にとって栄養が豊富なうえ適温多湿であることから、条件のよい棲息場所となっています。 人の皮膚はつねに代謝されており、深層から細胞が新生されると細胞は皮膚の表面へ押し上げられ、ついには角質層で死んだ細胞となり、最終的に垢となって皮膚から剥がれていきます。水虫の人は皮膚がぼろぼろになり、はがれやすくなっており、そのはがれ落ちた垢の中に白癬菌がたくさんいて、その上をはだしで歩くと足の裏に付着した垢の中の白癬菌が皮膚に侵入して感染してしまいます。銭湯やプール、運動施設のマットや脱衣所の床、旅館やホテルのスリッパなどで水虫の人が落とした垢をふみつけてうつることが多いようです。 でも、白癬菌が付着したからといって、すぐに水虫になるわけではありません。白癬菌はカビの一種なので細菌よりもはるかに大きく、すぐには人の皮膚の中に入り込めないのです。しかし、水虫の人の垢が付着したまま洗い落とさないで長時間放っておくと白癬菌が皮膚に侵入してしまいます。最初、菌が侵入したところに半米粒大の水ぶくれ(小水疱)ができて痒くなるのが水虫の始まりです。この水ぶくれの中身の液で水虫がうつると思っている人がいるようですが、この中には白癬菌はいないのでこの液でうつることはありません。

 水虫の症状 
水虫の症状は、足の指のまたがふやけた状態(浸軟)になったり、足の裏やへりに小さなみずぶくれが次々と地続きで広がっていき、とても痒く、乾いてくると皮がむけます(落膚)。一年中できていることもありますが、空気が乾燥する冬期には軽快しているようにみえます。しかし、実は治っておらず、夏になるとふたたび症状が悪化します。何年もこの状態がくり返されると先ほどのような急性症状をとることがしだいになくなり、じくじくせず、かゆみも自覚されず、慢性で難治性となっていきます。足の水虫は発生部位や症状の違いによって三つのタイプにわけられます。一つは趾間型、それに小水疱化型、もうひとつは角化型です。角化型は1%にも満たず、趾間型と小水疱型がほぼ同じ比率で大半を占めています。

 趾間型 
趾間とは「足の指の間」という意味で文字どおり足の指の間にできる水虫のことです。うつりたてでは小さな水ぶくれが数個できてむず痒いのですが、やがて乾いて皮がむける状態となり、かゆみは減ってゆきます。症状がひどくなると皮が白くふやけてじめじめし、それがむけて赤くただれると、むしろひりひり痛むようになります。ときには趾間の皮が肥厚して硬くなり、亀裂ができます。とくに風通しが悪く、カビが棲息しやすい第五趾(つまり足の小指)のとなり(第四趾間)にできることが多いようです。

 小水疱型 
足の裏の特につちふまずや足の指のはら、足の両側のへりなどに小さなみずぶくれができ、やがて皮がむけて赤くなり、靴をはくのが苦痛になるくらい非常に痒くなります。このタイプは悪化しやすい反面治りやすいのですが、やはり長年患っていると次第に難治性となります。

 角化型(角質増殖型) 
足の裏から足のへりまで全体が赤みを帯びてカサカサし、皮膚が肥厚して硬くなります。非常に治りにくく、ほとんど1年中症状に変化はありませんが、皮がむけたり、乾燥する冬になるとひび割れたり、あかぎれになったりします。 このタイプは水ぶくれができるわけでもじくじくするわけでもなく、痛みも痒みもないため、水虫だという自覚が少ないことが特徴です。発症してすぐこのタイプになることはきわめて少なく、長年放置しておいた人に多いようで、たいへん治しにくいタイプです。小水疱型は部分的に角化をともなったり、経過中に角化を起こしたりすますが、これはニ次的な角化で、あくまでも小水疱型であって、角化型とは言いません。

 爪の水虫 
爪も水虫になります。爪は骨と関係なく、角質層が変化した皮膚の一部なので、このなかにも白癬菌は侵入します。これが爪の水虫で、正式病名を爪白癬といいます。この水虫は、かゆい、痛いなどの自覚症状はありませんが、爪の先端が白く濁り、しだいに爪の下側、つまり爪の皮膚側が肥厚し、ひどくなると変形し、先端から壊れていくこともあります。爪が白く濁るだけのタイプを菲薄型(非角質増殖型)、爪の下側が厚くなるタイプを肥厚型(角質増殖型)といいます。自覚症状がないので放置されやすく、一本の爪からしだいに全部の爪が侵されていきます。 爪の水虫の感染経路としては、足の水虫から近くの爪へ白癬菌が侵入して足の爪が水虫になってしまう場合と、足の水虫やタムシをボリボリかいているうちに、手の爪が水虫になってしまう場合とがあります。

 治療 
水虫はきちんと治療すれば決して治らない病気ではありません。特に、うつりたてのもの、範囲が小さいもの、角化傾向のないものは完全に治ります。治療はくすりをぬる「外用療法」が主で、 外用薬は起床時と入浴後の一日二回あるいは就寝前に一日一回ぬるような外用薬が主流になっています。しかし、見た目で治ったようでも、白癬菌は生き残っていることが多く、外用を止めると再発するので症状がなくなっても1~3ヶ月はぬり続けなければなりません。しかし、水虫用外用薬は患者によっては、体質的にからだにあわずかぶれをおこしてしまう人がいます。外用薬によるかぶれは患部の痒みや赤みがまし、水ぶくれができ、ひどい場合はただれてきますので注意が必要です。

 予防 
先にも述べましたように、原因となる菌が皮膚に付着しただけでは水虫にはなりません。こまめに足を洗っていれば感染を防げます。それを怠ればたとえ治っても再感染し、水虫が再発する可能性が高いのです。 感染予防や増悪防止のため、日常生活上で特に注意したいことは、①乾燥させる、②清潔にする、③くすりをきちんと根気よくぬるの3点です。とくに足がむれると水虫を悪化させるので、通気をよくし、常に乾燥させておくことが大切です。家の中ではできるだけ素足で過ごしたり、会社ではスリッパにはきかえるなどして靴を脱いでいる時間を多くすることも大切です。 とくに女性の場合、社会進出にともない一日中靴をはきとおすことが多くなりましたが、ハイヒールと化学繊維のストッキングは、足の指の間に汗がたまってむれやすくなり水虫を悪化させるという男性にはない悪条件となっており、近年の女性の水虫患者の増加の原因になっています。 また、ズック靴やゴム長靴、人工皮革の靴も通気が悪くむれやすいので、できるだけ避け、皮製、布製の靴を選び、靴下もナイロン製よりも木綿(混紡)製にして毎日とりかえるようにしたいものです。夏の外出後やスポーツのあとなどは忘れずに足を洗う。その際、薬用石鹸で足の指の間までしっかり洗えば、感染は避けることができます。そしてたとえ発症しても、すぐに治療をはじめ、くすりを毎日定められた回数忘れずにきちんとぬれば、かならず治るはずです。

 おわりに 
「水虫かな」と思ったら、自己判断せず皮膚科医を受診し、白癬菌によるものなのかどうか診断してもらうことが大切です。自分で水虫だと思っていた人の約半数が実は水虫ではなかったということもあります。水虫は症状が慢性化すればするほど治りにくくなります。また、例えば、糖尿病や副腎皮質ステロイドによる治療を必要とする病気のような、微生物に対する身体の抵抗力が弱くなる基礎疾患があると、水虫にもかかりやすく、かつ治りにくくなります。水虫にかからないようにするためには、全身的に健康であることが重要です。

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