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2020-09-09

発熱をどう捉えるべきか

 発熱はどうして起こるか 
 発熱は炎症に伴って生じる現象です。体内で炎症が生じたとき、その部位からIL-1やIL-6などの物質(白血球間の情報伝達を行なっている物質)が放出されます。IL-1が脳の発熱中枢というところを刺激し、発熱を惹起しますし、IL-6は肝臓に伝えられます。このとき、肝臓の細胞ではアルブミンという蛋白の産生がストップして、CRP(C反応性蛋白)という物質が肝臓細胞で産生されるのです。現在では、この一連の反応が感染症の際生じ、その中でIL-1が発熱を起こす原因と考えられています。
 なお、このCRPは、急性炎症反応を示す重要な物質です。IL-1はかつては「パイロゲン」(発熱物質)として知られたものです。
 したがって、炎症が治まるとCRPの産生は抑制され、再びアルブミンの産生が高まり生体は正常な機能を復帰します。 炎症があるときには、熱とともに痛みを感じますが、痛みは知覚神経をもつ部位以外では感じません。そこで、発熱は炎症が生じていることを示す重要な指標となるのです。

 非感染性の病気でも炎症は起る 
 炎症がか起こる原因には、大きく分けてニつあります。一つはカゼやインフルエンザなどの例でご存じのように、ウイルスの感染、そして引き続く細菌の感染、または真菌などによる感染が生じたときです。もう一つは「膠原病」や「リウマチ熱」「SLE」(全身性エリテマトーデス)などのような非感染性の疾患によって起こるものです。
 どちらの場合も、炎症がどの部位で生じているのかを知ることが重要になります。つまり、発熱以外にどんな症状が認められるのかで、その後の対応が決まるのです。
 感染症による場合は、たとえばノドが痛くて高熱が出る。また、扁桃腺が腫れて真っ赤であるなどの症状が認められ、そのうえ膿性分泌物が咽頭を掩っていたら、これが 「急性細菌性咽頭炎」だということが分かります。
 しかし、非感染性疾患では、発熱だけでは分からないことも多いのですが、顔に赤みが認められる(蝶形紅斑)場合にはSLEのような病気が疑われるため、ただちに医師の診察を受けることか大事です。 また、症状が発熱だけであってもその患者さんがグッタリしているかいないのかも大切な症状であり、グッタリしていたら、すぐ医師の診察を勧めるべきです。頸部のリンバ腺が腫れて、症状がなくても長期間熱が下がらないこともありますが、感染ではない場合もあるのです(壊死性リンパ節炎という)。
 また、子どもなどでは、かなり高熱であっても熱が下がってケロリとしているような場合は心配はないのですが、呼吸や脈が早く、呼吸困難を伴っているような場合は、肺炎が最も疑われます。
 発熱を起こす病気で盲点になりがちなものに、小鳥などのペット類の糞の中のタンパクによって引き起こされるものがあります。多いのは「過敏性肺臓炎」というアレルギー性の疾患ですが、これは小鳥の糞の中のタンパクがアレルゲンとなるだけてなく、発熱を誘発することでも知られています。いずれの場合にも、家族内に同様の症状をもつ人がいるかどうか、小鳥を飼っているかどうかが決めてとなります。
 そこで、患者さんが発熱を訴えて薬局に来たときには、まずなによりも、他にどんな症があるのかをよく聞き明らかにカゼと分かる場合以外は、医師の診察を受けることを勧めます。

 高齢者の薬物服用は規定量を超えないこと 
 発熱は、高熱(38.5℃以上)、微熱(37℃少々)、中等の熱(その中間のもの)に分けられますが、とくに薬局で問題になるのは微熱の人たちです。微熱には女性であれば生理前などのように病気以外でも生じるものもありますが、「甲状腺機能亢進症」も微熱があり、解熱剤の服用だけでは治らないものもあります。このような場合にも、他にどんな症状があるのかを知ることは重要です。 関節痛などの痛み、食欲低下や痩せてきた、仕事の意欲が減退したなどの随伴症状を伴っているときは、かならず医師に診てもらう必要があります。病気の中にはがん性発熱もあり、ことに「肝臓がん」や「腎臓がん」では、高熱や微熱が長く続くこともあります。
 薬剤を投与する際に、とくに重要なのは高齢者の場合です。ご存じのように、一般に市販の解熱鎮痛剤は医師が処方する薬剤より薬剤量が低く抑えられていますが、高齢者では腎機能が低下しているため、指定量以上の薬剤を服用したときには、腎臓に障害を与える可能性と、血中濃度が高くなりすぎる可能性があります。加えて、老人では痩せている人(体重減少者)が多いため、少量でも血中濃度は一般の成人以上になります。そこで「服用量は決められた以上の量を超えないこと」も重要です。
 また、高齢者では、インフルエンザにかかったとき、肺気腫の合併(慢性的な息切れ)のあるような場合にはそれだけでも生命の危険も高くなります。また、抵抗力の弱い老人では肺炎に移行する確率も高いため、かならず医師の診察を受ける必要があります。

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