2020-09-09
立ちくらみ
立ちくらみは神経経路の障害で起こる
寝ていたり、あるいは座っていた姿勢から急に立ち上がったとき、フラフラしたり、めまいに近い感覚を覚えることかあります。俗に脳貧血ともいわれますが、これは頭の中の血液が一時的に減少して脳の働きが十分でなくなる現象で、医学的には「起立性低血圧」と呼ばれます。
このような症状は、学童期の子どもにも少なくない(ODという)のですが、ここでは成人に起こり、内科で診察されるものに限って述べていきます。
立っているとき、血液は重力の関係から下半身のほうに行きます。そのままだと下のほうに溜まってしまうため、その信号は直ちに末梢から中心部に向かう求心路という神経経路を通じて脊髄や脳幹に伝えられます。
正常な人では、このとき交感神経の働きによって、血液の溜まっている血管が収縮するため、つねに、どんな姿勢でも血液が全身にスムーズに流れるように調節されるしくみになっています。
ところが、信号を脳に伝える神経系にトラブルがあると、当然この働きがうまくいかなくなります。そこで、神経系に障害が起こると、立ちくらみが生じる可能性があります。たとえば、高血圧ぎみの高齢者、糖尿病の合併で自律神経障害をもつ人、また、脳卒中などの脳血管障害や中枢神経系の病気の患者さんなどによくみられることになります。
立ちくらみがもっとも多いのは、加齢に伴って血液変動を感じるセンサー(圧受容器)の感受性が低下するために起こるものです。とくに頸動脈や大動脈の圧受容器の感受性が低下したときには、調節機構が弱まるとともに、血圧の動揺も大きくなります。つまり年とともに自律神経の働きが低下してくるために起こるものです。
また、心臓病(とくに不整脈)のある状態でも、脈が遅くなったり心臓血管の硬化や血管壁の肥厚などによって、血管の弾力性が低下して起こることがあります。 治療が必要な失神症状
日常生活で耐えられる程度の立ちくらみであれば必ずしも治療の必要はないのですが、頻回に起こったり、失神したような場合は医師の診断を仰ぐ必要があります。
なお、失神は、自律神経失調の度合いがひどく、血管の収縮力が落ちて下半身に溜まった血液が戻れなくなり、全身を循環する血液量が減るため、脳内の循環量が少なくなった状態で生じるものです。
最近の研究では、このようなとき、心臓での血流量が減少するばかりてなく、心臓の収縮作用が強くなり(過収納)、心拍数・血圧・呼吸数まで落ちる現象が生じていることも確かめられています。
そこで、このような訴えのある人には、安静状態で脈拍数や不整脈の有無、自律神経機能、血液検査でのカテコールアミンその他のホルモンの値などとあわせて、寝た姿勢のままベッドを90度立ち上げる「チルト試験」という検査や、イソプロテレノールという薬剤による反応試験が実施されます。
このとき、自律神経の異常や立ちくらみの原因となっている病気が発見されれば、その病気本態の治療とともに、立ちくらみ改善のための治療が行なわれることになります。 立ちくらみの改善に使われる薬剤
かつては、ひどい立ちくらみ症状に対して、ペースメーカーによって脈拍を正常に保つ方法がとられていました。しかし、チルト試験の結果、これだけでは不十分だということもわかったため、現在ではさまざまな薬剤の投与が行なわれています。
もっとも広く使われているのは「ベータ遮断薬」という薬ですが、この薬の効果はあまり強くなく、最近では血管を収縮する作用の強い「アルファ刺激薬」がよく利用されています。また、立ちくらみはアセチルコリンという体内物質が血管を拡張することにも原因かあるため「抗コリン薬」が投与されることもあります。なお、不整脈のある状態では、「抗不整脈薬」も投与されることになります。
もうひとつ重要なことは、ひどい立ちくらみ症状のある人では、自律神経の失調だけでなく食後に低血圧(食事性低血圧)を伴う人が少なくないことです。
これは、食事によって血液が内臓に溜まって心臓に帰る血流量か減少するために生じる現象です。このとき、ふだんは120 mmHgほどあった血圧が70~60mmHgにまで低下するため、からだのだるさが食後2時間程度続くことになります。また、この食事性低血圧は長く寝たきりの人や、神経障害(神経変性疾患)のある人でもよくみられます。
このような病態にある人たちには、先に述べたさまさまな薬剤に加えて「ソマトスタチン」や「メチルキサンチン類」などの薬剤か追加されることになります。
興味深いことは、血圧の低下によって起こる立ちくらみには、1~2杯の濃いお茶やコーヒーなどを飲むことが発作予防に効果的だということです。お茶やコーヒーに含まれているカフェインには、覚醒作用とともに血圧を上昇させる働きもあるのてす。 多量に飲む必要はありませんが、ふだんから低血圧ぎみで立ちくらみに悩まされている人には勧められる方法です。
寝ていたり、あるいは座っていた姿勢から急に立ち上がったとき、フラフラしたり、めまいに近い感覚を覚えることかあります。俗に脳貧血ともいわれますが、これは頭の中の血液が一時的に減少して脳の働きが十分でなくなる現象で、医学的には「起立性低血圧」と呼ばれます。
このような症状は、学童期の子どもにも少なくない(ODという)のですが、ここでは成人に起こり、内科で診察されるものに限って述べていきます。
立っているとき、血液は重力の関係から下半身のほうに行きます。そのままだと下のほうに溜まってしまうため、その信号は直ちに末梢から中心部に向かう求心路という神経経路を通じて脊髄や脳幹に伝えられます。
正常な人では、このとき交感神経の働きによって、血液の溜まっている血管が収縮するため、つねに、どんな姿勢でも血液が全身にスムーズに流れるように調節されるしくみになっています。
ところが、信号を脳に伝える神経系にトラブルがあると、当然この働きがうまくいかなくなります。そこで、神経系に障害が起こると、立ちくらみが生じる可能性があります。たとえば、高血圧ぎみの高齢者、糖尿病の合併で自律神経障害をもつ人、また、脳卒中などの脳血管障害や中枢神経系の病気の患者さんなどによくみられることになります。
立ちくらみがもっとも多いのは、加齢に伴って血液変動を感じるセンサー(圧受容器)の感受性が低下するために起こるものです。とくに頸動脈や大動脈の圧受容器の感受性が低下したときには、調節機構が弱まるとともに、血圧の動揺も大きくなります。つまり年とともに自律神経の働きが低下してくるために起こるものです。
また、心臓病(とくに不整脈)のある状態でも、脈が遅くなったり心臓血管の硬化や血管壁の肥厚などによって、血管の弾力性が低下して起こることがあります。 治療が必要な失神症状
日常生活で耐えられる程度の立ちくらみであれば必ずしも治療の必要はないのですが、頻回に起こったり、失神したような場合は医師の診断を仰ぐ必要があります。
なお、失神は、自律神経失調の度合いがひどく、血管の収縮力が落ちて下半身に溜まった血液が戻れなくなり、全身を循環する血液量が減るため、脳内の循環量が少なくなった状態で生じるものです。
最近の研究では、このようなとき、心臓での血流量が減少するばかりてなく、心臓の収縮作用が強くなり(過収納)、心拍数・血圧・呼吸数まで落ちる現象が生じていることも確かめられています。
そこで、このような訴えのある人には、安静状態で脈拍数や不整脈の有無、自律神経機能、血液検査でのカテコールアミンその他のホルモンの値などとあわせて、寝た姿勢のままベッドを90度立ち上げる「チルト試験」という検査や、イソプロテレノールという薬剤による反応試験が実施されます。
このとき、自律神経の異常や立ちくらみの原因となっている病気が発見されれば、その病気本態の治療とともに、立ちくらみ改善のための治療が行なわれることになります。 立ちくらみの改善に使われる薬剤
かつては、ひどい立ちくらみ症状に対して、ペースメーカーによって脈拍を正常に保つ方法がとられていました。しかし、チルト試験の結果、これだけでは不十分だということもわかったため、現在ではさまざまな薬剤の投与が行なわれています。
もっとも広く使われているのは「ベータ遮断薬」という薬ですが、この薬の効果はあまり強くなく、最近では血管を収縮する作用の強い「アルファ刺激薬」がよく利用されています。また、立ちくらみはアセチルコリンという体内物質が血管を拡張することにも原因かあるため「抗コリン薬」が投与されることもあります。なお、不整脈のある状態では、「抗不整脈薬」も投与されることになります。
もうひとつ重要なことは、ひどい立ちくらみ症状のある人では、自律神経の失調だけでなく食後に低血圧(食事性低血圧)を伴う人が少なくないことです。
これは、食事によって血液が内臓に溜まって心臓に帰る血流量か減少するために生じる現象です。このとき、ふだんは120 mmHgほどあった血圧が70~60mmHgにまで低下するため、からだのだるさが食後2時間程度続くことになります。また、この食事性低血圧は長く寝たきりの人や、神経障害(神経変性疾患)のある人でもよくみられます。
このような病態にある人たちには、先に述べたさまさまな薬剤に加えて「ソマトスタチン」や「メチルキサンチン類」などの薬剤か追加されることになります。
興味深いことは、血圧の低下によって起こる立ちくらみには、1~2杯の濃いお茶やコーヒーなどを飲むことが発作予防に効果的だということです。お茶やコーヒーに含まれているカフェインには、覚醒作用とともに血圧を上昇させる働きもあるのてす。 多量に飲む必要はありませんが、ふだんから低血圧ぎみで立ちくらみに悩まされている人には勧められる方法です。
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