胆石のお話
痛む胆石は全体の3~4割
胆石とは、胆汁中のコレステロール、ビリルビン、カルシウムなどを成分としたかたまりをいい、胆のう内や胆管内でできます。大別してコレステロール胆石と、色素胆石(胆汁色素のかたまりによってできるもの)がありますが、あとのほうはさらにビリルビンカルシウム胆石と黒色石に分かれます。
胆石といえば、ふつう腹部の強い痛みを連想する人が少なくありませんが、その6~7割は無症状です。したがって、痛む胆石は3~4割ということになりますが、その痛みはせんつう(さしこみ痛)と呼ばれるもので、胃のあたりの痛みとともに背中にも痛みが生じるのが特徴です。
また、痛みそのものは、激しい痛みから、食後に腹部に重圧感を覚える程度のものまでとさまざまで、本人には “胃ケイレン”と思われている症状のほとんどは胆石なのです。本人が胆石かどうかを判断する場合、もうひとつ重要なことかあります。それは痛む時間の多くが就寝後2時間あたりに起こることです。そこで、夜間、胃と背中に痛みを感じたようなときには、まず胆石を疑ってください。
胆石に、痛むものと痛まないものがあるのは、胆石の動きが関係しています。 痛みを感じるのは、石が胆のうの入口にあるときと、石が胆管に飛び出して十二指腸に落ちる寸前の2箇所に限られます。したがって、動かずに胆のうの中にあるあいだは痛みを感じることはありません。しかし、人間ドックや健康診断などによって「胆石がありますね」と言われたあとなどに、よく痛みを訴える人がいますが、これは多分に心理的なものです。 胆石の原因はーつではない
石がよく動くのは “脂肪のかたまり” であるコレステロール胆石の場合です。一方の色素系胆石(なかでも黒色石)はあまり動きません。これは、石の重さの違いによるもので、軽い石ほどよく動くためです。したがって、痛む胆石は、ほとんどの場合コレステロール胆石だということになります。
現在、胆石は増加傾向にありますが、これには脂肪分の多い欧米なみの食生活の普及も一因と考えられています。しかし、血液中でのコレステロール値の高い人たち(高コレステロール血症)が、すべて胆石に移行するわけではありません。
なぜ胆石ができるのか…? いま原因とみられているのは、次の3つのカラクリです。肝臓から胆のうに運ばれてくるコレステロールは胆汁酸によって溶かされていますが、まず、この胆汁酸によって溶かしきれなかったコレステロールの結晶が石の核をつくることが予想されます。つまり、①コレステロール過飽和胆汁の状態です。また、胆のうは食事のつど収縮をくり返していますが、②この収縮機能が悪い人では胆のう内に石の核がつくられやすいことも予測されます。さらに、胆のう内の粘膜壁にはムチンというノリ状の物質がありますが、③このムチンがコレステロールなどを張り付ける作用をしているのではないか、と疑われています。つまり、胆石は、このような要因の相乗作用によってつくられると考えられているわけです。
かつてアメリカの医学書では、女性、40歳代、肥満、多産傾向などが胆石になりやすいタイプだと書かれていましたが、最近では20歳代の男性でもみられるようになり特定の人たちに多いという考えはあてはまらなくなっています。 大多数の人に効果のみられる薬物療法
先にも述べたように、胆石の6~7割は無症状です。したがって、胆石で苦しむのは痛みのある場合だけだということになり、この限りにおいて胆石は良性の疾患です。そこで、内科的な立場からいえば、痛みのない胆石は治療不要ということになります。かつては無症状性胆石は胆のうがんになる可能性があることから、摘出手術も行なわれていましたが、現在、胆石から胆のうがんに移行する確率はきわめて低いことが、アメリカ国立衛生研究所によっても指摘されています。また、手術によって胆のうそのものを摘出した場合、大腸がんの発生頻度が高くなるという指摘もなされています(ただし、この問題にはまだ未解決な部分もあります)。
そこで、胆石と診断された場合、通常2通りの治療法が行なわれることになります。
一つは石の数が複数個あるとき、薬剤によって石を溶かす方法で、これを「胆汁酸溶解療法」といいます。CT検査で石灰化していないことを確かめる必要があります。
もうーつは石が大きく、一個の場合に行なわれるもので、衝撃波によって石を直径1~2 mm程度にまで砕き、十二指腸へ自然落下させる「体外衝撃波胆石破砕療法」(ESWL)という方法です。
胆汁酸溶解療法は、ウルソデスオキシコール酸という薬剤を1日600mg飲んでもらうものです。飲むのは毎日就寝時1回だけと簡単ですが、治療は年単位を要するため、がまんづよく飲み続けることが必要です。飲み忘れさえなければ効果は確実で、たとえば2年間の成績では45%の人では完全に溶けており、今のところ100%の人に何らかの効果が得られています。
問題は4~5年後に3割弱の人たちに再発のみられることてすが、再発した胆石のほとんどは無症状であり、また、薬剤によって溶かすことができるため、あまり深刻になる必要はありません。
胆石とは、胆汁中のコレステロール、ビリルビン、カルシウムなどを成分としたかたまりをいい、胆のう内や胆管内でできます。大別してコレステロール胆石と、色素胆石(胆汁色素のかたまりによってできるもの)がありますが、あとのほうはさらにビリルビンカルシウム胆石と黒色石に分かれます。
胆石といえば、ふつう腹部の強い痛みを連想する人が少なくありませんが、その6~7割は無症状です。したがって、痛む胆石は3~4割ということになりますが、その痛みはせんつう(さしこみ痛)と呼ばれるもので、胃のあたりの痛みとともに背中にも痛みが生じるのが特徴です。
また、痛みそのものは、激しい痛みから、食後に腹部に重圧感を覚える程度のものまでとさまざまで、本人には “胃ケイレン”と思われている症状のほとんどは胆石なのです。本人が胆石かどうかを判断する場合、もうひとつ重要なことかあります。それは痛む時間の多くが就寝後2時間あたりに起こることです。そこで、夜間、胃と背中に痛みを感じたようなときには、まず胆石を疑ってください。
胆石に、痛むものと痛まないものがあるのは、胆石の動きが関係しています。 痛みを感じるのは、石が胆のうの入口にあるときと、石が胆管に飛び出して十二指腸に落ちる寸前の2箇所に限られます。したがって、動かずに胆のうの中にあるあいだは痛みを感じることはありません。しかし、人間ドックや健康診断などによって「胆石がありますね」と言われたあとなどに、よく痛みを訴える人がいますが、これは多分に心理的なものです。 胆石の原因はーつではない
石がよく動くのは “脂肪のかたまり” であるコレステロール胆石の場合です。一方の色素系胆石(なかでも黒色石)はあまり動きません。これは、石の重さの違いによるもので、軽い石ほどよく動くためです。したがって、痛む胆石は、ほとんどの場合コレステロール胆石だということになります。
現在、胆石は増加傾向にありますが、これには脂肪分の多い欧米なみの食生活の普及も一因と考えられています。しかし、血液中でのコレステロール値の高い人たち(高コレステロール血症)が、すべて胆石に移行するわけではありません。
なぜ胆石ができるのか…? いま原因とみられているのは、次の3つのカラクリです。肝臓から胆のうに運ばれてくるコレステロールは胆汁酸によって溶かされていますが、まず、この胆汁酸によって溶かしきれなかったコレステロールの結晶が石の核をつくることが予想されます。つまり、①コレステロール過飽和胆汁の状態です。また、胆のうは食事のつど収縮をくり返していますが、②この収縮機能が悪い人では胆のう内に石の核がつくられやすいことも予測されます。さらに、胆のう内の粘膜壁にはムチンというノリ状の物質がありますが、③このムチンがコレステロールなどを張り付ける作用をしているのではないか、と疑われています。つまり、胆石は、このような要因の相乗作用によってつくられると考えられているわけです。
かつてアメリカの医学書では、女性、40歳代、肥満、多産傾向などが胆石になりやすいタイプだと書かれていましたが、最近では20歳代の男性でもみられるようになり特定の人たちに多いという考えはあてはまらなくなっています。 大多数の人に効果のみられる薬物療法
先にも述べたように、胆石の6~7割は無症状です。したがって、胆石で苦しむのは痛みのある場合だけだということになり、この限りにおいて胆石は良性の疾患です。そこで、内科的な立場からいえば、痛みのない胆石は治療不要ということになります。かつては無症状性胆石は胆のうがんになる可能性があることから、摘出手術も行なわれていましたが、現在、胆石から胆のうがんに移行する確率はきわめて低いことが、アメリカ国立衛生研究所によっても指摘されています。また、手術によって胆のうそのものを摘出した場合、大腸がんの発生頻度が高くなるという指摘もなされています(ただし、この問題にはまだ未解決な部分もあります)。
そこで、胆石と診断された場合、通常2通りの治療法が行なわれることになります。
一つは石の数が複数個あるとき、薬剤によって石を溶かす方法で、これを「胆汁酸溶解療法」といいます。CT検査で石灰化していないことを確かめる必要があります。
もうーつは石が大きく、一個の場合に行なわれるもので、衝撃波によって石を直径1~2 mm程度にまで砕き、十二指腸へ自然落下させる「体外衝撃波胆石破砕療法」(ESWL)という方法です。
胆汁酸溶解療法は、ウルソデスオキシコール酸という薬剤を1日600mg飲んでもらうものです。飲むのは毎日就寝時1回だけと簡単ですが、治療は年単位を要するため、がまんづよく飲み続けることが必要です。飲み忘れさえなければ効果は確実で、たとえば2年間の成績では45%の人では完全に溶けており、今のところ100%の人に何らかの効果が得られています。
問題は4~5年後に3割弱の人たちに再発のみられることてすが、再発した胆石のほとんどは無症状であり、また、薬剤によって溶かすことができるため、あまり深刻になる必要はありません。
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