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風邪にかからないための心得

 10月に入ると朝晩はめっきり涼しくなり、体調を崩されている人も多いのではないでしょうか、こういう季節の変わり目はかぜをひきやすくなります。
 そこで今回はかぜについて、特集を組んでみました。文中には難しい名前も出てきますが細かいことは気にせず、気楽に読んで下さい。


かぜにかかりやすい人、
       かかりにくい人


 はじめに 
 かぜは、もっとも普遍的にみられる感染症で、呼吸器、とくに上気道の急性炎症です。かぜの病原体、炎症をおこしている部位、宿主(病原体による感染を受ける人)の条件、初感染か再感染かにより病像は異なりますが、寒気、発熱、鼻水、咽頭痛などは共通する症状です。かぜにかぎらず、感染症は病原体・宿主の相互関係により成り立っていますが、かぜではさらに、インフルエンザをはじめ感染力が強く、集団発生も多いことから、生活環境もかぜを引きおこす重要な要因となります。 この3つの要因が絡み合ってかぜを引きおこすわけです(表1)。

かぜにかかりやすい要因

  • かぜ病原体側の要因
    • 宿主側の要因
      • 環境要因
         呼吸器感染防御機構 
         1回のくしやみで空気中に約10万個の飛沫が飛び、そのうちの4000個は30分間空気中に浮遊し、この粒子にかぜの病原体が含まれています。これを吸入することによりかぜに感染します。かぜの病原体が侵入すると、くしゃみや鼻水が出るようになり、くしゃみは異物を排除する反射で、鼻水中のリゾチーム、IgA(免疫グロブリンA)、白血球などが防御機能の役割をしています。咽頭では扁桃・リンパ組織があり、喉頭では喉頭反射、咳、痰による異物排除がなされます。肺胞では肺胞マクロファージによる肺胞内浄化が行なわれます。また、気道は粘液線毛輸送系の線毛運動による物理的防御能、気道分泌液に含まれたムコ多糖体、リゾチームやインターフェロンなどの非特異的体液因子、正常細菌叢、さらにIgAに代表される中和抗体などさまざまの防御機構がはたらいています。これら各種の防御能と病原体との戦いにより、かぜの症状がおこるのです。

         かぜ病原体側の要因 
         ウイルスではインフルエンザウイルスのほか、もっとも多いのがライノウイルスで、そのほかコロナウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、およびエンテロウイルスで、これらのウイルスはいずれも同じかぜ症状を示しますが、それぞれのウイルスによって少しずつおこす病状が異なります。 たとえば、A型インフルエンザでは上気道症状よりも高熱、頭痛などの全身症状が強く、アデノウイルスやエンテロウイルスは夏かぜの原因になりやすいのです。また、アデノウイルスはプール熱と呼ばれる咽頭結膜熱をおこす場合もあります。 ウイルスの感染力と病像は年齢によっても異なることがあります。RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスは小児に感染しやすく、またライノウイルスは成人に感染しやすく、成人のかぜの30~50%を占めます。RSウイルス、パラインフルエンザウイルスは、乳幼児では細気管支炎、気管支炎、肺炎など重症の感染をおこしやすいのが特徴です。ライノウイルスやコロナウイルスは成人の普通感冒の原因となりやすく、鼻かぜと呼ばれる軽症のかぜを引きおこします。 かぜにかかりやすい条件として、ウイルスの量も問題となります。ウイルス量が多ければ感染しやすく、また発病しやすいし、症状も強く出ると考えられています。

         宿主の要因/  
         血液検査をすればだれでも多くのウイルスの抗体が検出されることから、だれでも多くのウイルスの感染を受けているはずです。しかし、同じようにウイルス感染を受けたとき、かぜにかかりやすい人とかかりにくい人がいるのはなぜでしょうか。同じ環境で、同じウイルス感染をおこしても、人によってちがった症状が出るのはなぜでしょうか。すなわち、これはかぜウイルスに感染しているが、かぜの症状が出るかでないかのちがいなのです。かぜにかかりやすいか否かの要因となる感染防御能に要因があり、宿主のかぜに対する抵抗力の問題なのです。宿主のリスク因子として免疫能があります。通常かぜにかかると1週間程度で回復します。かぜにかかると免疫ができ、この免疫がある間は同じウイルスの感染はおこりませんが、免疫の持続期間はウイルスの種類によって異なります。鼻腔にライノウイルスワクチンを投与すると、鼻汁の中和抗体は330日間検出されたとの報告もありますが、かぜの病因ウイルスの種類は多く、抗体が消失するとまた同じウイルスの再感染を受けるため、くり返しかぜにかかることになります。 上気道局所の感染防御能が低下していれば、もちろんかぜにかかりやすくなります。アレルギー、喫煙、大気汚染などで気道粘膜上皮が障害されたときなどが危険です。喫煙は影響ないとの報告も多いですが、いずれにしろかぜにかかると喫煙者は下気道症状もみられ遷延化するようです。扁桃腺の肥大があると鼻呼吸ができなくなり、口から直接冷たい空気が入り、気道粘膜が障害されます。扁桃腺摘出はかぜの易感染性とは関係がないと考えられています。 つぎに年齢も重要な因子の一つです。一般に乳幼児など小児は成人に比べてかぜにかかりやすく、症状は重症傾向にあります。これは病原体に対する免疫が不十分であること、気道が未発達でせまいこと、オプソニン活性が低いなどの理由に加えて、集団で生活することが多いためだと考えられています。かぜにかかりやすい子どもとは、乳児期では年間11回、幼児・学童期では6回以上を反復気道感染児と定義づけられています。免疫学的調査でも、かぜにかかりやすい子どもがあり、これは遺伝と生活環境により成立すると考えられています。具体的にあげると、まず小児ではいわゆる浸出性体質、アレルギー体質があると、かぜにかかりやすくなります。ある報告によれば、喘息をおこしやすい小児では兄弟で同じ感染の機会があると、非喘息児は50%であるのに喘息児では85%がかぜにかかるそうです。
         母乳児は人工栄養児に比べてかぜにかかりにくく、これは主に母乳に含まれる分泌型IgA抗体の効果によるものです。また、肥満児はかぜにかかりやすい傾向があります。なぜかといいますと、肥満のために肺の換気が悪くなることに加えて、咳が上手にできず、気道の清浄化ができないこと、そして肥満は人工栄養児に多いことから、免疫能の低下(人工栄養にはIgA抗体が含まれていない)も関係していると考えられています。貧血、とくに鉄欠乏性ではかぜにかかりやすくなります。栄養障害児でも免疫能低下から感染をおこしやすくなります。 精神的ストレスも同様で、とくに子どもでは母親とのコミュニケーションが悪い、しつけがきびしい、母親と離れて住んでいるなどもかぜにかかりやすくなる原因だと考えられています。 反復性体質性感冒様疾患(いわゆる文明かぜ)という言葉をご存じでしょうか? これは近年、家庭や社会の環境がくずれ、生き生きした生活体験の欠けた子ども、たくましさに欠けた子どもが増加し、呼吸器の自律神経失調状態による非感染性のかぜで、春秋に好発するとされています。 これは大人でも同様ですが、成人ではかぜにかかったきっかけとなる訴えは、寝不足をした、忙しく休む暇なく働いていた、海外旅行で疲れた、生理中である、栄養不足などの誘因が多いようです。一方、緊張感が失われたとき、すなわち気がゆるむとかぜをひきやすくなります。これらはいずれも日常の規則正しい生活のりズムが乱れたときで、いわゆるこれらのストレスが引き金となってかぜ症状が発症すると考えられています。気道粘液、鼻腔血管拡張、炎症のコントロールなどのメカニズムに自律神経も影響しており、またストレスはT細胞の機能を抑制するとの報告もあります。
         内向性の人は外向性の人よりかぜにかかりやすいようです。女性では性ホルモンとの関連性があり、生理中はかぜにかかりやすくなります。これはホルモンによる鼻・気管支粘膜のうっ血やー般の代謝への影響などによると推測されています。 したがって、かぜにかかったときは睡眠をよくとり栄養を十分にとり、心身ともゆっくり休むことが第一となります。かぜに対する特効薬はないので、日ごろからの生活の乱れを直し、抵抗力を回復させることが最良の治療法と言えます。

          環境要因 

         かぜで病因へ行く人の中には、「私は年中かぜをひいています」という人もあれば、「久しぶりにかぜをひきました」という人もいます。通常、人は平均年間3~5回かぜをひき、年齢が低いと回数は多くなりますが、個人によるばらつきは大きいようです。 かぜにかかりやすい人は、日常生活で人との接触が多い、すなわち、家族の構成人数が多い、集団生活など感染する機会が多いのが特徴です。既婚の女性は男性より感染率が高くなりますが、これは小児との接触が多いためだと考えられています。 かぜウイルスは気道以外に結膜や糞便中にも排出され、したがって、伝播経路は空気、飛沫および結膜、皮膚や汚染物の直接接触などですが、ウイルスの種類によってもその経路は異なるようです。一般には平素から手洗いやうがいをしている人では感染頻度は低くなります。 かぜは寒さだけではかかりませんが、間接的に温度と湿度が関係します。インフルエンザをはじめ、かぜの多くは寒い季節にかかりやすく、集団発生もおこりやすいのです。かぜの流行と寒さとの関連性についての研究は多く行われています。寒い時期は室内に閉じこもることが多く、かぜの人がいれば、換気の悪い室内で空気感染により伝播しやすくなり、かぜにかかってしまうようです。 また、ウイルスによって活性化しやすい環境条件が異なります。インフルエンザウイルスやライノウイルスなど冬にみられるかぜは低温で、湿度が低いと活性化しますが、アデノウイルスやエンテロウイルスのような夏かぜは高温多湿のほうが活性化します。
         しかし、年中かぜをひいていると言っている人の中には、本当のかぜではなく、アレルギー性鼻炎やほかのかぜとまぎらわしい病気であることも多いようです。極端な例では、悪性腫瘍などの重大な疾患が隠されていることもあります。ほかに考えられる原因としては、自律神経失調の症状としてかぜ様の不定愁訴を訴える人が多いようです。 また、患者の症状に対する感受性の問題もあり、咽頭発赤が非常に強く、見ているだけで痛そうな咽頭所見でもたいしたことはないという人もいれば、軽度の咽頭炎でも痛くて具合が悪いと訴える人もいます。発熱を例にとってみても、高熱でもたいしてつらくない人と、微熱だけでー見重症にみえる人もあり、千差万別で、これらは精神的な面と症状に対する感受性のちがいと考えられます。診療上はかぜの所見がなくても、性格的に神経質な人や、小児では母親が過保護な場合にかぜ様症状の訴えが多く、しかも長期にわたり訴えつづける傾向にあり、診察する医師を悩ませることがよくあるそうです。 かぜは生活様式によってもかかる回数がちがってきます。生活のりズムをくずさないようにこころがけることが、かぜの感染から身を守る最低条件といえましょう。

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