ビタミン不足に注意!
こんな症状が出たら
ビタミン不足を疑うべし
ヒトのビタミン欠乏症にはビタミンA、B1、B2、ニコチン酸、B6、葉酸、B12、C、D、Kがよく知られています。ビタミン欠乏症が発症するには誘因があり、それぞれのビタミン欠乏症特有の症状を示しますが、どのビタミンが欠乏しても初期に起こる症状は共通していて、疲労感、食欲不振、頭重、肩こり、動悸、めまい、イライラなどの不定愁訴を訴えるようになります。このような症状があった場合にはビタミン不足を疑うことが大切です。そして、さらに欠乏状態がすすむと典型的な欠乏症状が現われます。 ビタミンA欠乏症
初期にみられる徴候は毛嚢角化症で、つぎに暗順応障害(暗いところへ入ってもなかなか目が慣れない)、味覚、臭覚、聴覚障害や脳圧上昇などです。目の症状は、暗順応が不良となる夜盲ばかりでなく、涙の分泌が減少し、眼球結膜の乾燥やビオット斑点が認められる眼球乾燥症(ドライアイ)、さらに進行すれば、角膜軟化症を生じ、角膜が破れて水晶体が押し出されて失明することがあります。
皮膚症状は、毛嚢口に限局して角化した皮膚の上皮細胞が堆積し、帽針頭大の円錐形小結節をつくり、皮膚は粗造となります。よく発症する部位は上腕、大腿の伸展部および外側で、進行すれば、肩、背部、臀部、腹部などにも認められるようになります。さらに、皮膚の変化として脱毛、色素沈着、接触性湿疹などをともなうこともあります。
また、気管支粘膜の上皮細胞が萎縮変性して炎症を起こしやすくなったり、胃粘膜も萎縮し、分泌障害や食欲不振をきたすこともあります。
胆道、輸尿管などの粘膜も角化し、脱落した細胞が塊をつくって結石を生ずることがあります。生殖器においては、輸精管上皮の変性と睾丸の萎縮が認められ、子宮の粘膜も角化して不妊の原因になるといわれています。 ビタミンB1欠乏症
ビタミンB1欠乏症として、脚気とウェルニッケ脳症がよく知られています。
脚気は、末梢神経炎を生じる乾性脚気と、浮腫や心不全を伴う湿性脚気があり、多くの場合は両方同時に見られます。自覚症状として、最初は疲れ易さを感じる程度ですが、進行するにつれ、食欲不振、下肢のしびれ感、動悸、息切れが加わります。時に、頭重、肩こり、めまいなどの症状が現れます。
衝心脚気では突然の幅吐がみられ、ショック状態に陥ります。
その他、四肢の知覚鈍麻、腓腹筋握痛、腱反射の低下や消失、とくに膝蓋腱反射の消失は有名です。脈拍数は増加し、右心不全をきたすと浮腫が増強し、頸静脈の怒張、肝腫増大がみられるます。浮腫は下肢にもっとも多く、ついで、顔面、全身におよびます。
ウェルニッケ脳症は中枢神経障害の症状を示します。傾眠から昏睡と様々な程度の意識障害を引き起こします。神経症状は、障害部位や障害程度により異なりますが、もっとも多い症状は眼球運動障害で、眼振(無意識に眼球が小刻みに振るえる)が生じます。精神症状は作話症、幻覚、記銘力障害、見当識障害、せん妄などをきたします。日本では、アルコール常用者に多くみられるます。 ビタミンB2欠乏症
ビタミンB2欠乏症の症状は眼に灼熱感、羞明(まぶしく感じる)、異物感(目にゴミが入ったような感覚)を感じるようになり、さらには角膜血管新生(角膜に血管が侵入する)が起こります。そのほかに舌炎、口唇炎、口角炎、顔面、陰嚢部の脂漏性皮膚炎を起こします。 ニコチン酸欠乏症
ニコチン酸欠乏症はペラグラで有名です。皮膚炎、下痢、精神神経症状が三大徴候です。 皮膚炎は顔、頸部、手足など日光にあたる部分に両側、対称性に発赤、水泡が生じ、ついで表皮の肥厚、粃糠疹、かさぶた形成、褐色色素の沈着を生じます。
下痢もひどく、一般の下痢止め剤は無効です。精神神経症状は不安、抑うつの軽い状態から痴呆、せん妄、妄想、幻覚、強直性けいれんなど種々です。 ビタミンB6欠乏症
症状としては、食欲不振、悪心、嘔吐など消化器症状や脂漏性皮膚炎、口唇炎、口角炎、舌炎、低色素性貧血、多発性神経炎、けいれんなどが起こります。 葉酸欠乏症
大血球性貧血(赤血球の成熟障害、骨髄における巨赤芽球の出現)、出血傾向、口内炎、舌炎、下痢などが起こります。 ビタミンB12欠乏症
ビタミンB12の欠乏症は悪性貧血として知られています。症状は大血球性貧血、舌炎(ハンター舌炎)、無酸症、下痢などが知られています。さらに、脊髄後索や側索の変性による深部知覚障害、四肢麻痺などが現われます。
欠乏症はビタミンB12の食事からの摂取不足よりも内因子の障害などによるビタミンB12の吸収障害が誘因となることが多いようです。 ビタミンC欠乏症
ビタミンC欠乏症は壊血症といわれます。症状は毛嚢角質部の増殖、腫脹、歯ぐきからの出血、歯ぐきの腫れ、潰瘍、壊死、そのほか外力の加わるところに出血が起こりやすくなります。
乳幼児では歯や骨の発育が悪く、骨折を起こしやすくなり、メラー・バロウ病とよばれます。 ビタミンD欠乏症
ビタミンD欠乏により骨基質の量に比べて骨塩量が減少し、石灰化障害のために骨塩が沈着しなくなります。骨端線の閉鎖以前にビタミンD欠乏症になるとくる病となり、骨端線の閉鎖後にビタミンD欠乏症となると、骨軟化症となり、長管骨、椎骨、骨盤の骨痛や変形、筋力低下、筋肉痛などがみられます。 ビタミンK欠乏症
ビタミンKは血液凝固に関係するプロトロンビン、補体第Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子の生成に必要です。したがって、この欠乏は出血傾向をきたします。
ヒトでは新生児や乳児にその欠乏症がみられ、新生児メレナはビタミンK欠乏が成因です。また、乳児ビタミンK欠乏性出血症は母乳栄養児に多く、皮膚や粘膜下の出血、頭蓋内出血を起こします。これは母乳中のビタミンK不足が原因だと考えられています。 おわりに
日本では深刻なビタミン欠乏症は少なくなりましたが、潜在性ビタミン欠乏状態の人は多数存在することが推定されています。潜在性ビタミン欠乏状態がすすむと軽症のビタミン欠乏症となり、疲労感、食欲不振、頭重、肩こり、動悸、めまい、イライラなどの症状が出現します。この時点で食生活を含めたライフスタイルの見直しが必要す。
しかし、このような症状は種々の疾患でも認められるため、原因がビタミン欠乏によるものか鑑別する必要があります。その方法として、はビタミン剤投与により、その症状が消失するか否を見ることが重要な鍵となっています。
ビタミン不足を疑うべし
ヒトのビタミン欠乏症にはビタミンA、B1、B2、ニコチン酸、B6、葉酸、B12、C、D、Kがよく知られています。ビタミン欠乏症が発症するには誘因があり、それぞれのビタミン欠乏症特有の症状を示しますが、どのビタミンが欠乏しても初期に起こる症状は共通していて、疲労感、食欲不振、頭重、肩こり、動悸、めまい、イライラなどの不定愁訴を訴えるようになります。このような症状があった場合にはビタミン不足を疑うことが大切です。そして、さらに欠乏状態がすすむと典型的な欠乏症状が現われます。 ビタミンA欠乏症
初期にみられる徴候は毛嚢角化症で、つぎに暗順応障害(暗いところへ入ってもなかなか目が慣れない)、味覚、臭覚、聴覚障害や脳圧上昇などです。目の症状は、暗順応が不良となる夜盲ばかりでなく、涙の分泌が減少し、眼球結膜の乾燥やビオット斑点が認められる眼球乾燥症(ドライアイ)、さらに進行すれば、角膜軟化症を生じ、角膜が破れて水晶体が押し出されて失明することがあります。
皮膚症状は、毛嚢口に限局して角化した皮膚の上皮細胞が堆積し、帽針頭大の円錐形小結節をつくり、皮膚は粗造となります。よく発症する部位は上腕、大腿の伸展部および外側で、進行すれば、肩、背部、臀部、腹部などにも認められるようになります。さらに、皮膚の変化として脱毛、色素沈着、接触性湿疹などをともなうこともあります。
また、気管支粘膜の上皮細胞が萎縮変性して炎症を起こしやすくなったり、胃粘膜も萎縮し、分泌障害や食欲不振をきたすこともあります。
胆道、輸尿管などの粘膜も角化し、脱落した細胞が塊をつくって結石を生ずることがあります。生殖器においては、輸精管上皮の変性と睾丸の萎縮が認められ、子宮の粘膜も角化して不妊の原因になるといわれています。 ビタミンB1欠乏症
ビタミンB1欠乏症として、脚気とウェルニッケ脳症がよく知られています。
脚気は、末梢神経炎を生じる乾性脚気と、浮腫や心不全を伴う湿性脚気があり、多くの場合は両方同時に見られます。自覚症状として、最初は疲れ易さを感じる程度ですが、進行するにつれ、食欲不振、下肢のしびれ感、動悸、息切れが加わります。時に、頭重、肩こり、めまいなどの症状が現れます。
衝心脚気では突然の幅吐がみられ、ショック状態に陥ります。
その他、四肢の知覚鈍麻、腓腹筋握痛、腱反射の低下や消失、とくに膝蓋腱反射の消失は有名です。脈拍数は増加し、右心不全をきたすと浮腫が増強し、頸静脈の怒張、肝腫増大がみられるます。浮腫は下肢にもっとも多く、ついで、顔面、全身におよびます。
ウェルニッケ脳症は中枢神経障害の症状を示します。傾眠から昏睡と様々な程度の意識障害を引き起こします。神経症状は、障害部位や障害程度により異なりますが、もっとも多い症状は眼球運動障害で、眼振(無意識に眼球が小刻みに振るえる)が生じます。精神症状は作話症、幻覚、記銘力障害、見当識障害、せん妄などをきたします。日本では、アルコール常用者に多くみられるます。 ビタミンB2欠乏症
ビタミンB2欠乏症の症状は眼に灼熱感、羞明(まぶしく感じる)、異物感(目にゴミが入ったような感覚)を感じるようになり、さらには角膜血管新生(角膜に血管が侵入する)が起こります。そのほかに舌炎、口唇炎、口角炎、顔面、陰嚢部の脂漏性皮膚炎を起こします。 ニコチン酸欠乏症
ニコチン酸欠乏症はペラグラで有名です。皮膚炎、下痢、精神神経症状が三大徴候です。 皮膚炎は顔、頸部、手足など日光にあたる部分に両側、対称性に発赤、水泡が生じ、ついで表皮の肥厚、粃糠疹、かさぶた形成、褐色色素の沈着を生じます。
下痢もひどく、一般の下痢止め剤は無効です。精神神経症状は不安、抑うつの軽い状態から痴呆、せん妄、妄想、幻覚、強直性けいれんなど種々です。 ビタミンB6欠乏症
症状としては、食欲不振、悪心、嘔吐など消化器症状や脂漏性皮膚炎、口唇炎、口角炎、舌炎、低色素性貧血、多発性神経炎、けいれんなどが起こります。 葉酸欠乏症
大血球性貧血(赤血球の成熟障害、骨髄における巨赤芽球の出現)、出血傾向、口内炎、舌炎、下痢などが起こります。 ビタミンB12欠乏症
ビタミンB12の欠乏症は悪性貧血として知られています。症状は大血球性貧血、舌炎(ハンター舌炎)、無酸症、下痢などが知られています。さらに、脊髄後索や側索の変性による深部知覚障害、四肢麻痺などが現われます。
欠乏症はビタミンB12の食事からの摂取不足よりも内因子の障害などによるビタミンB12の吸収障害が誘因となることが多いようです。 ビタミンC欠乏症
ビタミンC欠乏症は壊血症といわれます。症状は毛嚢角質部の増殖、腫脹、歯ぐきからの出血、歯ぐきの腫れ、潰瘍、壊死、そのほか外力の加わるところに出血が起こりやすくなります。
乳幼児では歯や骨の発育が悪く、骨折を起こしやすくなり、メラー・バロウ病とよばれます。 ビタミンD欠乏症
ビタミンD欠乏により骨基質の量に比べて骨塩量が減少し、石灰化障害のために骨塩が沈着しなくなります。骨端線の閉鎖以前にビタミンD欠乏症になるとくる病となり、骨端線の閉鎖後にビタミンD欠乏症となると、骨軟化症となり、長管骨、椎骨、骨盤の骨痛や変形、筋力低下、筋肉痛などがみられます。 ビタミンK欠乏症
ビタミンKは血液凝固に関係するプロトロンビン、補体第Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子の生成に必要です。したがって、この欠乏は出血傾向をきたします。
ヒトでは新生児や乳児にその欠乏症がみられ、新生児メレナはビタミンK欠乏が成因です。また、乳児ビタミンK欠乏性出血症は母乳栄養児に多く、皮膚や粘膜下の出血、頭蓋内出血を起こします。これは母乳中のビタミンK不足が原因だと考えられています。 おわりに
日本では深刻なビタミン欠乏症は少なくなりましたが、潜在性ビタミン欠乏状態の人は多数存在することが推定されています。潜在性ビタミン欠乏状態がすすむと軽症のビタミン欠乏症となり、疲労感、食欲不振、頭重、肩こり、動悸、めまい、イライラなどの症状が出現します。この時点で食生活を含めたライフスタイルの見直しが必要す。
しかし、このような症状は種々の疾患でも認められるため、原因がビタミン欠乏によるものか鑑別する必要があります。その方法として、はビタミン剤投与により、その症状が消失するか否を見ることが重要な鍵となっています。
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